言えないキス

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「大人しくって……」 どう考えても思い通り動けそうにないから、そう呟いて大きく息を吐く。 自分以外のみんなは平気そうにビールを飲んでダーツを投げて、楽しそうに笑ってる。だから、 「タフだなぁ」 と呟いて重たい頭を右手で押さえた。すると、 「大丈夫?」 聞こえる甲高い声に凌は顔を上げる。照明が暗くてよく分からないけど、 「サリー」 この声は覚えてるから、彼女の名前を呼ぶとサリーは凌の視線と同じ高さになるようしゃがみこんだ。 「酔ってるの?」 「多分」 「初めて飲んだの?」 「うん」 レオと交わした会話を繰り返すとサリーは少し申し訳なさそうな顔をして、「ごめんね、無理やり飲ませて」と凌の手を取った。 「ここ、うるさくて頭に響くでしょ? こっち」 触れる手が冷たくて気持ちいい。 さらに優しく手を引いてくれるから、 「……うん」 凌はその手に引かれるまま立ち上がって、 「階段、気をつけて」 階段を上り始めた。
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