1560人が本棚に入れています
本棚に追加
「大人しくって……」
どう考えても思い通り動けそうにないから、そう呟いて大きく息を吐く。
自分以外のみんなは平気そうにビールを飲んでダーツを投げて、楽しそうに笑ってる。だから、
「タフだなぁ」
と呟いて重たい頭を右手で押さえた。すると、
「大丈夫?」
聞こえる甲高い声に凌は顔を上げる。照明が暗くてよく分からないけど、
「サリー」
この声は覚えてるから、彼女の名前を呼ぶとサリーは凌の視線と同じ高さになるようしゃがみこんだ。
「酔ってるの?」
「多分」
「初めて飲んだの?」
「うん」
レオと交わした会話を繰り返すとサリーは少し申し訳なさそうな顔をして、「ごめんね、無理やり飲ませて」と凌の手を取った。
「ここ、うるさくて頭に響くでしょ? こっち」
触れる手が冷たくて気持ちいい。
さらに優しく手を引いてくれるから、
「……うん」
凌はその手に引かれるまま立ち上がって、
「階段、気をつけて」
階段を上り始めた。
最初のコメントを投稿しよう!