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「そう、アキに」
「はい。知ってました? 藤井君の家って高校入試専門だけど予備校を経営してるらしくって」
そんな美穂の説明に「あぁ」と彼の声が返ってくる。
「隣駅だったかな? あるよね」
「そうなんですか?」
こんなことを話していても、彼はもうアメリカで勿論『隣駅』じゃない。
「僕もね、家庭教師やることになったんだよ」
「え? そっちで?」
驚く美穂に「うん」と落ち着いた声が返される。
「日本語の家庭教師。思ったより日本って人気みたい」
そんな報告に「そう、ですか」と少しばかり不安になってしまう。
家庭教師となれば2人っきりで、しかも先生は『鳴海凌』で――。
するとクスリと笑う声がスマホの向こうから聞こえる。
「もしかして心配してくれてる?」
「べ、つに、心配なんて……」
素直に妬くよりも可愛い反応に凌はにこりと微笑む。
「相手は男の子だし、教える場所もカフェだから安心して?」
「だから! 心配なんてっ!」
「だよね、僕は女の子が好きだし」
「知ってます!!」
そう叫ぶ美穂に凌はクスクス笑った。
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