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無事に助けられたのはいいが,
逢沢といると本当に疲れる。
デートのつもりで俺は此処まで来たわけじゃないのになぁ。
彼奴ほんと何言ってんだろ。
本当に俺の事好きなのか?
頭の中をぐるぐると回る。
逢沢,御前は本当に何なんだよ…
調子が狂う。
俺に惚れる要素なんてあるのか?
逢沢が何処かへ歩き出した。
「ちょ,何処行くんだよ!」
「何処ってアトラクション以外に何があるの?」
思わず黙ってしまった。
また,ジェットコースターに乗るなんて俺は絶対に嫌だからな。
逢沢は何を考えているのか推測出来ない。
だからこそ,調子が狂うのだろう。
「格好良かったな…」
思わず呟いてしまった。
前を歩く逢沢の方を見るが,何も聞こえていないようだ。
凛々しい横顔に不本意ながらも見惚れてしまった。
女の子にもそれなりに人気なんだろうな。
そう思ったら何故か胸が締め付けられるような,なんと言うか筆舌に尽くし難い感情がこみ上げた。
何だろうかこの感情は。
「…なぁ,逢沢」
「何?」
心なしか不機嫌そうだ。
少し,怖いが恐る恐る話し始めた。
「…ごめん,何でもない」
「春輝の"何でもない"は何かあるって事だろ,言ってみなよ。
ある程度の事なら聞くから」
上から目線な喋り方に苛立ちを覚えるも,それが逢沢なんだと心に留めた。
逢沢の買った冷たいコーラから結露が地面に流れ落ちるように,夏でもないのに額から汗が流れ落ちる。
暫く黙り込んだ,何故か黙り込んでしまった。
「お願いだから,ジェットコースターだけは勘弁してくれよ」
「分かってる,春輝の嫌がる事はしないよ」
そう言って,彼は僅かに笑みを零す。
「…有難う」
「どう致しまして」
小さく呟いたお礼の言葉を彼は聞き取ったらしい。
もしかしたら,さっきの言葉も聞こえたのでないだろうか。
と少し不安を覚えた。
「次はこれに乗ろう」
そう言って逢沢が指差したのはメリーゴーランド。
「なんでこれ選んだの」
「だって,春輝に似合いそうじゃないか」
お前は乗らないのか。
「似合わないし,逢沢は乗る気ないだろ」
「まあね」と悪戯そうに微笑む此奴が俺の胸を更に締めつけた。
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