第14話

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ふと,逢沢の方をみると目が合ってしまった。 「佐藤」 呼ばれた。 「それとも,名前で呼んだ方がいいか?」 何を言い出すんだ此奴は。 「ど,どっちでもいいよ。 逢沢の好きなように呼んだら?」 「じゃあ,遠慮なくそうさせてもらうよ」 逢沢は何処となく嬉しそうだ。 俺はそうでもないが。 「お,俺はなんて呼んだらいい?」 何で聞き返した俺! 「どっちでもいいよ。 佐藤の好きなように呼んだら」 俺が先程言った台詞をそのまま返しやがったな逢沢氏。 「あ…じゃあ,逢沢でいいや」 そう言うと逢沢の顔が近づいた。 通行中にこれはどういう状況なんだよ。 腐女子には見ものじゃねぇか。 腐女子らしき女の子達が何か群がってる気がする。 …逢沢さん,俺はそんなに目立ちたくないんだけどな。 いい加減にしろ帰国子女。 俺もう帰りたいよ。 「あーあの,逢沢さん?」 「類」 「え?」 「類って呼んでよ春輝」 な,名前で呼ばれた。 吃驚した。 「え,あ,逢沢?」 「類」 「あ,はい…」 「次,名字で呼んだらキスするから気をつけろよ春輝」 無表情だった逢沢が,口角を上げながら言った。 「え,それはちょっと…」 「なら,名前で呼べばいい話だろ?」 「そ,そうだけどさ…」 「もしかして,意識してんの?」 ギクッ 図星だ,どうしよう当たってる。 逢沢には何処となく逆らえないような気がしてたけど。 もう絶対服従しなければならないのだろうか。 泣きたい。 「春輝,可愛い」 ちょ,ストーップ! 顔が近いです逢沢さん。 「か,顔近い…」 「御免,春輝が可愛くてつい」 なんなの此奴。 本当俺は御前の彼女じゃないんだからさ! 不覚にもときめいた俺も悪いけどさ。 此奴といると,本当に心臓がもつか不安である。 きっと,何個あっても足りない気がする。 帰国子女だからなのかもしれないが,いちいちあざとい。 此奴乙女ゲームの主人公の彼氏役でもやってんのか? 腐女子らしき女の子達が黄色い声をあげだすし。 もうほんと何なの逢沢さん。 俺はホモなんかじゃないんだってば!! 多分幾ら否定しても,この状況じゃ誰もわかってくれないだろう。 本当に疲れる。
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