第14話

5/12
前へ
/12ページ
次へ
焦る俺を気にせず歩いて行く逢沢。 2人の間に会話はない。 唯,黙っているだけである。 逢沢は何も話そうとしないし,俺も話したりはしない。 「春輝」 「ふぇ?」 突然の事なので当然驚くのだが,俺の驚き方が異様だったのか小さく笑い出した逢沢。 「な,なんだよ…!」 「いや,春輝の反応が面白くてつい」 笑いながら弁解する逢沢。 「仕方ないだろ…吃驚したんだから!」 「そんな春輝も可愛いよ」 マジで何なの帰国子女。 「ば,馬鹿にするのもいい加減にしろよ…!」 「馬鹿にはしてないよ,だって春輝が可愛いのは事実だし」 「事実じゃないし…」 逢沢には何処か逆らえないところがある為かうまく反論できない。 「兎に角君は可愛いよ春輝」 ひとまとめにされてしまい,何も言えなくなった。 可愛い,なんて言われた事ないから少し反応に困る。 男に可愛いだなんて死語だろ。 「あ,あのさ…」 「何」 「俺の何処が可愛いの?」 すると,逢沢は考え込むふりをして 「やっぱり反応かな。面白いからどんどんいじり倒したくなる。」 「それって単に俺で遊んでるだけだよね?」 「いや,俺は君の事を本気で愛してるよ」 もうわかった,分かったから何も言わないでくれ帰国子女。 「…う,うん」 愛してるなんて言われても複雑だ。 差別と言われれば終わりだが,相手は同性な訳だし? 逢沢は同性愛者なのだろうか。 まぁそうなるよな,男が好きなわけだし。 花月は俺と逢沢が結ばれるなんて展開を求めているらしいが俺はそのつもりはないんだよな。 「俺の気持ち,受け取ってくれるの?」 「まぁ,好きって言われると普通に嬉しいし」 「なら,いっそのこと付き合うっていうのはどうかな」 「それとこれとは話が違うような...」 「そうだよな,御免な」 泣きそうな顔をする逢沢。 「あ...逢沢お,俺こそ御免..言い過ぎたよ」 「な-んて。優しいな春輝は」 此奴...はめたのはよ俺の事。 「ふ,ふざけんなよ逢沢っ!!本気で焦ったんだから!!」 「俺は君のそんなところが好きだよ,単純で騙されやすいけど優しい所が」 これは馬鹿にされているのか,褒められているのか。 どちらなのだろうか。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加