花には水を

2/11
前へ
/35ページ
次へ
仕事が終わり更衣室に戻ると、さっきの榊さんの話で持ちきり。 勿論、その中心にいるのは・・・・・・ 「で、榊さんなんて言ったの?琴ちゃん」 「あのね、『うまくいっても俺のせいです』って!!」 そう琴ちゃんが言うと「きゃー」と上がる黄色い声。 「あのセクハラ部長にそこまで言えるなんて最高ね!」 「あーあたしもその場面見たかった~」 「でも、そんなこと言っても大丈夫なの?あの部長、結構陰険だし」 その台詞にあたしの心臓はドクンッと音を立てた。 そうよ、だってこのままで済むはずがない。 きっと、左遷とか降格とか・・・・・・ あの部長ならやりかねない、かも――? そんな考えに背筋をゾクリとさせ顔を上げると、みんなの中心で琴ちゃんはニコリと笑う。 「大丈夫だって。『東栄物産』の常務とはかなり仲イイみたい。噂ではその娘さんとつき合ってるんだって」 「あぁ、だから強気に出られるのね」 そんなうわさ話にあたしも思わず「あぁ」って声を漏らしちゃった。 部長の話からしても『東栄物産』との取引はすごく大切みたいだったし。 でも、やっぱり心配は心配で・・・・・・。 「と、言うわけでコンパ行こうか?奈々美!」 いきなり目の前にニカッと笑顔で現れた琴ちゃん。 「な、なんで?!」 そう言って後ずさるあたしの腕を琴ちゃんはグッと握って。 「だって、榊さんにお礼言わないと。奈々美を庇って言ってくれたんだよ?」 それはごもっともな意見なんだけど、 それと今日のコンパと一体何の関係が・・・・・・? 目を丸くするあたしにやっぱり琴ちゃんはニッコリ笑う。 「今日のコンパは『海外促進部』となんで~す」 琴ちゃん、 あなたの笑顔は素敵なんだけど・・・・・・、 後ろの視線が痛いんだって――。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1885人が本棚に入れています
本棚に追加