花には水を

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「珍しいわね、稲森さんがコンパに来るなんて」 「ホント、彼氏に怒られるんじゃない?」 なんてトゲトゲしい言葉にあたしは引き攣りそうな笑顔を。 「あ、えぇっと、人数合わせに琴ちゃんに頼まれて・・・・・・。でもすぐ帰りますからっ」 『仕方なく』というのを強調してそう言えばお局、 もとい、 お姉さま達は「そう」と呟いてあたしから視線を外してくれた。 あぁ、だから来たくなかったのに。 そう思ってももう遅い。 琴ちゃんに連れられて来たのはちょっとおしゃれな居酒屋で。 「奈々美!こっちこっち!すみませーん、遅くなりましたぁ」 個室のドアを開けるなり、テンションの高い琴ちゃんの声に中から「待ってたよ」「やっと来たか」と声が返ってくる。 「じゃーん、今日は奈々美もいっしょでーす」 「えっ?」 いきなり腕を引っ張られて一歩前に出ると、 瞬間、静まり返る室内。 みんなが固まる空間で引きつりそうになりながら、あたしはいつもの『受付スマイル』で「こんにちは」と、もう夜なのに意味不明な言葉を口にしてた。 すると、「・・・・・・マジ?」と言う声を皮切りに、 「スッゲー、本物っ!?」 「ラッキー!!」 なんて声にあたしは笑顔を貼りつけたまま立ち尽くす。 だって背中に痛いほどの視線を感じるから・・・・・・。 「ほら、座って」 琴ちゃんに勧められるまま座りそっと顔を上げた。 確かに相手は全員『海外促進部』で、その中には勿論・・・・・・。 「今日の榊さん、すっごく格好良かったです!」 琴ちゃんの声に、 「そんなこと、今日は本当に嫌な思いをさせたね」 なんて彼はあの甘ったるい笑顔を振りまいてた。
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