第2話

花には水を

「飲みもの何にする？」

いつの間にか隣にいる男性社員に聞かれ、あたしはニッコリ笑って、

「ウーロン茶で」

って言ったのに、と彼は、

「またまたぁ」

とおどけるように言って、勝手にディタオレンジだかなんだかを頼んでた。

テーブルの上にはビールとかチューハイとかドカドカと置かれていって。

「それじゃ、乾杯」

そんな声で『海外促進部』との合コンが始まった。

「彼氏いるの？」

「社内じゃないよね？」

「年上？」

「付き合ってどれくらいなの？」

入れ替わり立ち替わり両サイドに座る男性社員からの質問に、

「はい」とか「まぁ」とか「内緒です｣って笑顔を添えて適当に返すこと１時間。

･･････いい加減、頬の筋肉が引きつりそう。

あたし、何しに来たんだっけ？

そう思いながら顔を上げるとお姉さま方に囲まれた榊さんの姿に、あたしは小さくため息を付きたくなった。

お礼なんて言えるような状況じゃないのはお互い様。

琴ちゃんですら榊さんから遠ざけられてる。

･･････コンパなんて全然楽しくない。

だから、あたしはニッコリ笑って背中のカバンを持ち上げた。

「すみません、ちょっと･･････」

そう言って必殺『受付スマイル』を振りまけば、男性社員達はほんのり赤い顔のまま「ど、どうぞ」「早く帰ってきてね」とか言いながらあたしに道を作ってくれた。