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高嶺の花は咲いてるか?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
あたしに必要なのは、
甘い水と、
暖かい太陽と、
しっかりとした大地。
その全部が揃わないと、
花は咲かない――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「・・・・・・なに?」
心配そうに覗き込んでくる琴ちゃんの声にはっとして、あたしはやっと持ったままの受話器をゆっくりと戻した。
「榊さんが、応接室に来いって・・・・・・」
「なんで?」
「わかんないよ・・・・・・」
そう言うと琴ちゃんが「もしかして」と難しい表情を見せるから、あたしだって心配になって次の声に身構えてしまった。
「ほらっ、さっき高橋常務が『残念だ』って言ってたじゃん?それって商談がポシャッたとか!」
「――えぇ?!」
「だって、ほかに考えられないじゃん!奈々美なんかやったの?!」
「なっ、何も――っ」
やってない!
それがダメなの?!
さっきの接客ちゃんとできなかったから?
そんなことで?!
「早く行って謝ったほうがいいよっ、早く!!」
「う、うん」
あたしは琴ちゃんに背中を押されてエレベーターに飛び乗った。
もう心臓はバクバクで通り過ぎる人に挨拶すら出来なくて、まっすぐに第一応接室を目指した。
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