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『一目ぼれ』
と言うのとは少し違うのかもしれない。
だけど、確実に俺の心は囚われたわけで。
「それって・・・・・・」
視線を宙に漂わせながらあの日のことを思い出そうとする奈々美。
「あたしが早退した日――」
「熱があったんだろう?」
そう聞くと彼女はコクンと頷いた。
だろうね。
ブラウス越しでも彼女の肌は熱く、俺を見上げた顔は火照っていたから。
「えっ?でも、アレって・・・・・・」
あの時の営業マンが俺だなんて彼女は覚えてなくて当然だろう。
その後、かなり朦朧とした感じでタクシーに乗ったから。
いや、俺が乗せたんだけど。
「本当はあの後、送ってやりたかったんだけどな」
「へっ?」
間抜けな奈々美の声に俺はクスリと笑う。
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