綺麗な花には…?

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会社になんて行きたくない。 ちゃんと寝たはずなのにお化粧のノリは悪い。 満員電車は息苦しいし、女性専用って言っても咽かえるような香水の匂いに顔は勝手に歪んでしまう。 だからって休むなんてことは出来るはずもなく、重たい足を前に進めた。 いつものように制服に着替えて受付に。 笑顔を張り付けて「おはようございます」を繰り返す。 「おはよ、稲森ちゃん!今日も綺麗だね」 「おはようございます、川本さん。今日も変わらず元気ですね」 ニッコリ笑ってあしらって。 大丈夫。 ちゃんと笑えてる。 そう思ったのに―― 自動ドアが開いた瞬間から、あたしの仮面が剥がれ落ちる。 「で、いつ会場の確認できるの?」 「確認だけならいつでも」 「なら、早めに――」 そんな会話に意識が勝手に向いて・・・・・・。 「おはようございます」 隣りの琴ちゃんの声に我に返って、 「あぁ、おはよう」 琴ちゃんに合わせて軽く頭を下げた。 視線が合わないように。 そっと顔を上げた時、彼らはもうあたしの横を通り過ぎた後で・・・・・・。 「とりあえずプレゼンの資料を見せてくれよ」 「あぁ。一緒にクライアントの――」 そしてあたしはまたため息をついた。
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