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「でも、よく言うわよね『やけぼっくいに』って」
「あははっ、それいつの時代の言葉よ!」
「なに言ってんの?恋愛なんて源氏物語の時代から進歩のないものよ?」
「おぉ!なんだが文学的ね」
お局さんたちの笑い声に顔が引きつっていくのがわかった。
駄目。
ちゃんと笑って、『そうですね』くらい言えないと――。
「でも、今は奈々美先輩の彼氏ですよ。二人が仲よさそうに『焼肉屋』に入って行くのあたし見ましたから」
その声は後輩の――
「前田、さん」
「ね?先輩」
前田さんに振られたのは琴ちゃんで、
「うん、本当にいつも惚気ばっかりで聞いてるほうが恥ずかしくなるくらいだもんねぇ」
ってあたしの肩をポンっと叩いて。
「じゃ、仕事に戻ろっか?」
とあたしの腕に手を絡めて更衣室から出してくれた。
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