綺麗な花には…?

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「見たの・・・・・・」 「何を?」 心臓の鼓動が強く早く胸を叩く。 「この、車。拓海が運転してて、その隣に・・・・・・」 もう痛くて、胸から飛び出るんじゃないかってくらいに。 「それで、か・・・・・・」 まるでため息を吐き出すかのように呟かれる台詞に、 あたしの心臓はギュッと強く掴まれたような痛みに支配された。 こんなのまるでストーカーだ。 でも、本当に――。 「み、見かけたのは偶然で!加代とカフェに居た時にっ!  絶対この車って自信は無かったけど、そのっ、別に見張ってたとかそういうんじゃ――」 テンパってるあたしの声を「ねぇ」と拓海が静かにさえぎった。 「それって国道沿いのカフェ?」 「えっ?あ、うん」 「見たのは2時過ぎくらいか?」 「・・・・・・うん」 確かにあのカフェは国道沿いで、時間もそれっくらいだった。 きょとんとするあたしの頭に大きな手がポンと置かれる。 「それ、俺だ。よく分かったな」 「・・・・・・え?」 「奈々美が車に詳しいとは思わなかった」 「詳しくなんて――」 ない。 というか車種とか全然分からない。 わかったのは、 「拓海の、車だから」 そう答えると、 「そっか」 と笑ってくれた。
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