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そんなの――
「あたしだって!」
もうダメだと思った。
「二人は両想いで、しかも同じ仕事してて一緒に出張だし拓海の携帯にっ」
「ストップ」
あたしの口を塞ぐ大きな手。
拓海は困ったような笑みを浮かべて、
「本気で悪かった。殴られても仕方ないと思ってる」
「・・・・・・そんな、殴ったりなんて」
「なら別の方法を教えて」
「えっ?」
「奈々美の言うこと、何でも聞くから」
「・・・・・・」
そう言われても即座に浮かんだりなんて――
「とりあえず、何食いたい?」
「食う・・・・・・?」
「今朝からまともなもの口にしてないんだ。コーヒーばかりで胃が痛い」
なんていいながら胃を押さえる拓海の姿に少し笑えた。
「でも、早番でよかったな」
確かに。
定時上がりだと退社時、大勢の人と一緒になるし、遅番でも誰かに合う可能性は高い。
早番なら大抵、誰にも会うことなく帰ることが多いから。
「適当にデリバリーでいい?」
「やっ、なんか作りますって!」
そんなわけでタクシーに乗って拓海の部屋にいたりする。
「だから、俺の家にはなんもないの。その顔で買い物する気?」
「・・・・・・」
無理です。
だって、まぶたは腫れてるしメイクだってボロボロ。
だから家に帰りたいって言ったのに。
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