その手に花を

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「――あ、あのっ」 小さな彼女の声も、俺の手を振りほどこうとする力もすべて無視して歩いた。 このフロアは更衣室に食堂、それに小さなミーティングルームがある。 いわば社員のためのフロア。 俺が開けたドアはミーティングルーム。 そこの札を『使用中』に変えて、彼女を中に閉じ込めて、 鍵をかけた。 ある意味、これって拉致監禁だよな。 こんなにも愚かな自分の行動を揶揄してみるが、苦笑すら出来ないほど余裕のない自分がいる。 ゆっくり顔を上げれば彼女がいて。 だけど俺と目を合わせることなく俯いた。 何をどう話したらいいんだろう? 今までのどのプレゼンよりも緊張してる。 ・・・・・・いや、緊張じゃなくて、 怖いんだ――。 急に渇きを覚えた喉をゴクリと鳴らす。 そして、 「・・・・・・奈々美」 俺の声に彼女の肩がビクリと震えた。 けれど返ってくる声も、彼女の顔も上げられることは無くて・・・・・・。 沈黙が痛い。 何を伝えればいい? どうすれば、彼女を失わなくてすむ――?
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