1521人が本棚に入れています
本棚に追加
「――あ、あのっ」
小さな彼女の声も、俺の手を振りほどこうとする力もすべて無視して歩いた。
このフロアは更衣室に食堂、それに小さなミーティングルームがある。
いわば社員のためのフロア。
俺が開けたドアはミーティングルーム。
そこの札を『使用中』に変えて、彼女を中に閉じ込めて、
鍵をかけた。
ある意味、これって拉致監禁だよな。
こんなにも愚かな自分の行動を揶揄してみるが、苦笑すら出来ないほど余裕のない自分がいる。
ゆっくり顔を上げれば彼女がいて。
だけど俺と目を合わせることなく俯いた。
何をどう話したらいいんだろう?
今までのどのプレゼンよりも緊張してる。
・・・・・・いや、緊張じゃなくて、
怖いんだ――。
急に渇きを覚えた喉をゴクリと鳴らす。
そして、
「・・・・・・奈々美」
俺の声に彼女の肩がビクリと震えた。
けれど返ってくる声も、彼女の顔も上げられることは無くて・・・・・・。
沈黙が痛い。
何を伝えればいい?
どうすれば、彼女を失わなくてすむ――?
最初のコメントを投稿しよう!