その手に花を

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今まで、付き合った分だけ別れてきた。 俺から別れを告げることもあれば、彼女のほうから告げられることもあった。 だからといって引き止めたいなんて思ったことは一度もない。 その別れは俺も期待していたものばかりだったから。 でも、今回は違う。 こんな別れ、俺は望んでないし、 きっと彼女だって・・・・・・。 そう思いたい。 ただの自惚れだって分かってる。 今の自分がどんなに滑稽かもわかってる。 それでも―― 「奈々美、昨日のは」 「・・・・・・ごと」 「えっ?」 俯いた奈々美から聞こえた小さな声。 なんて言った? 「お仕事、戻らないんですか?」 上げられない視線、完全な敬語。 俺を拒絶する彼女――。 「・・・・・・今日は直帰の予定だったから」 そこまで言うと理解したのか、奈々美は口を閉じた。 「だから、俺の話を」 「あたしっ、今日は早番でもう帰りますから」 俺の声を遮ってカツッとヒールを鳴らす。 俯いたまま俺の前を通り過ぎてドアノブに手を伸ばして――、 「待って」 俺は彼女の手を掴んだ。 「離し」 「奈々美っ、少しでいいから話を」 「――聞きたくないっ!!」
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