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「出して!」
「話を聞いてくれるまでここからは出さない」
「聞きたくない、どいてってばっ!!」
俺の体を押しのけて彼女の手がドアノブに伸びる。
俺はその手を捕まえて――、
「俺が好きなのは」
「やっ――」
「奈々美だからっ」
彼女を抱きしめた。
だけど腕の中で体を強張らせるのを感じて・・・・・・。
「・・・・・・嘘、つき」
腕の中から震える声に、更に強く抱きしめる。
「嘘じゃない」
「・・・・・・離して」
「嫌だ」
「大声、出しますよ」
「それでもここからは出さない」
俺の声にドアノブに伸ばされた腕が静かに下ろされていく。
「聞いて、奈々美」
「・・・・・・」
彼女の手は俺を掴んだりはしない。
身体は強張ったまま、だけど俺の腕から逃れることもしなくなった。
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