高嶺の花の咲かせ方

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2月に入ってすぐ、 「日本はどうだ? 榊」 「安田部長! お久しぶりです!」  恵まれていたときの上司が本社にやってきた。 「とりあえず、美味くて安い日本料理をご馳走してくれ。美味い日本のビールもな!」  そして上海で同じ部署だった高木も。 「そんなことより、娘に土産はいいのか?」  茶化した俺の台詞に高木は「別居中なんだよ」と苦い笑いで返した。  上海支店での仕事は本社とはやはり違う。中国という国をすべてターゲットにしてるから中国中を飛び回る。この国は広い。 「重慶に一週間出張に行ってる間に帰られた」  ビールを一気に飲み干して高木はそう言った。  誰も知り合いのいない中国。勿論、周りには日本からついて来た家族の人たちはいる。けれど小さな世界だ。付き合いも気を使って神経をすり減らして……。それで単身赴任を余儀なくされてる人を俺も何人か知ってる。 「まぁ、仕方ねぇよな。ご近所付き合いまで俺も手が回らねぇって」  そう言いながら高木はまたビールを注文。 「それより、お前どうすんの?」  その質問に今度は俺が苦笑する。 「やりたいけどね。一応部長にもそう答えたけど……」  安田部長に帰ってこないかと誘われた。ただ、俺は本社に戻ったばかり。だからとりあえず企画書を出せ、と。俺はそれを断ることが出来なかった。これが万が一採用されたら、 「そうか、またお前と仕事できるな?」  俺は上海に戻ることになる。そうなったとき、彼女は俺を選んでくれるだろうか? 「まだ企画書の原案すら作ってないって」 「いや、お前なら大丈夫だ」 「煽ててもおごらないぞ?」 「そりゃ残念」  とりあえず、その先のことを考えるのは後回しにした。まだ、どうなるか分からないから。
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