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「どうかした?」
加代の声にあたしの肩が震えた。
「なんでも……」
ない。
きっと見間違いだ。
「うん、本当になんでもないよ」
あたしはさり気なく笑って加代にそう答えた。
車だって似てただけ。
運転席の人だって一瞬しかみえなかったし、本当に彼か?って聞かれても多分としか答えられないくらい曖昧なあたしの記憶。
だから、
「さっきの車、知り合いかと思って……。でも、違ったみたい」
そう言って冷たいオレンジジュースを胃に流し込んで、さっきまでの考えも一緒に飲み込んだ。
その日の夜、
彼から電話もメールもなかった。
約束なんかしてないけど、
明け方まであたしは鳴らない携帯を見つめてた。
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