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『理想のカップル』
なんて言葉に今更ながら顔が赤くなる。
――って、喜んでる場合じゃない!
そうだ、金曜日もコンパがあって、
あたしは勿論、拓海も出てなくて・・・・・・。
どう、なったんだろう?
更衣室のドアを手に掛けて思わずゴクリと喉を鳴らしてしまった。
ゆっくりとドアノブを捻って中へ。
「・・・・・・おはよう、ございます」
大きくなく、けれど聞こえるくらいの声で伺うように挨拶してみる。
「あ、奈々美!おはよ!」
一番に返ってきたのはいつもと分からない琴ちゃんの声。
そして、
「おはよう、稲森さん」
先輩の声はいつもより低く聞こえた。
「お、おはようございます・・・・・・」
もう一度そう言って、頭を低くしたまま自分のロッカーへ。
チラッと琴ちゃんを見ると意味深な笑みを浮かべるだけで、どうなってるのか分からない。
けど、
「聞いたんだけど――」
背中から聞こえる声に思わず背筋がぴんと伸びてしまう。
ゆっくりと振り返ると、更衣室にいる人たちの視線はあたしに集まってって――、
「榊さんと付き合ってるって?」
あまりにストレートすぎる質問にあたしはゴクリと喉を鳴らした。
こんなとき、どこを見ていいのか。
視線を泳がせながら、
「・・・・・・えぇ、まぁ」
と、小さく答えると更衣室内の温度が2,3度下がった気がした。
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