第1話

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 そうだ、相模だ。いつもあの四人組でつるんでて絡みがないから忘れてた。けれどなんだろう、由比ヶ浜に向けられた棘のようなものを感じる。相模の取り巻きの笑い方も気に食わない。 「んー、そういうんでもないんだけど」  由比ヶ浜の返答を見て比企谷を見たのを、あたしは見逃さなかった。知らないものを見るものじゃない、ホウ酸団子を食べたゴキブリを見るかのような笑い方。吐き気がする。  よほど何か言ってやろうかと思ったとき、あたしの席の後方から声が上がった。「つーかさ。結衣はあーしと一緒に客呼び込む係だから無理っしょ」  偉そうな言い方は癇に障るけど、よくやった三浦。たった一言で相模たちを黙らせた。 「そーなんだ、呼び込みも大事だよねー」  相模たちは作り笑いを浮かべた。弱い奴は踏みつぶそうとするくせに、強い奴にはへこへこするのか。ますます嫌いなタイプだ。それに、比企谷が簡単に踏みつぶされるタマだと思ったら大間違いだ。  三浦たちがなにやら漫才じみたことをしていたら、葉山が声を上げた。 「つまり、こういうことでいいのかな。リーダーシップ発揮してくれそうな人にお願いしたいってことでいい?」  単にさっきルーム長が言ったことを言い換えただけだけど、重要なところだ。教室内で存在感のない比企谷には無いところを補わなきゃいけない。つまり、この時点であたしは選に漏れたことになる。 「したっけ、相模さんじゃね?」  葉山グループの金髪チャラ男が提案し、葉山が更に乗っかる。 「ああ、いいかもな。相模さん、ちゃんとやってくれそうだし」 「だべー?」  葉山、意外と腹黒いな。しかしこれだと相模よりも比企谷の方が大変そうだ。 「えぇ? うちぃ? うちにできるかなぁ。ぜーったい無理だぁってぇっ!」  一見拒絶しているように見えるけど、さっき由比ヶ浜や比企谷に見せた顔を考えると、こいつがこんなしおらしい奴じゃないことは明らかだ。 「相模さん、そこをなんとかお願いできる?」 「……まぁ他にやる人いないならしょうがないとは思うけどー。でも、うちかぁ」  こんな茶番に付き合うのも馬鹿馬鹿しい。 「じゃあ、うちやるよー」  あたしにはもう関わりのないことだ。比企谷とも夏休みに予備校で会ったとき以来話していない。けれども大きな借りはある奴だ。それとなく見ていることにしよう。
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