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案の定、チャイムが鳴る間際に教室に入った比企谷は黒板を見て固まっていた。
何度か抗弁したようだが、結局意見が通ることはなかった。先生の授業開始の合図と共に席に戻る。
これで男子の実行委員は決まったわけだけど、女子の委員を決めるの段になってまた問題が起きた。比企谷という男の存在を今日まで知らなかった人が多数なのに、一緒に組むなど考えられないのだろう。
実際、あたしも比企谷のことを知ったのは、同じクラスになって結構経ってからだ。その頃のあたしは、自分の学費を稼ぐために年齢を偽って夜間のバイトをしていた。両親共働きだから家事は全部あたしがやっているから、その時間じゃないと働けなかった。
朝帰りを繰り返すあたしを心配した弟の大志から相談を受けたのが、比企谷だったというわけだ。最初屋上で会ったときは、舐めた進路希望を書く奴だと軽蔑したけど、あたしの問題をあっさりと看破し、たった数分で解決して見せたのもこの比企谷八幡だった。
以来、大志はすっかり彼になついているし、あたしも割と好感を持っている。い、いや好感だからな! 良い奴だと思ってるだけだからな!
と、ともかく、彼を知る女子はこのクラスにほとんどいないだろう。同じ部活の由比ヶ浜くらいかもしれない。誰もいないならあたしがやろうか、いやしかしぼっち同士で組んだらクラスとの意志疎通が図れないか。そんなことを思っていると、
「正直、由比ヶ浜さんがやってくれると助かるなぁ」
由比ヶ浜の名が上がり、あたしはふと我に返った。
「人望あるし、クラスをちゃんとまとめてくれると思うし、適任だと思うんだけど」
「いや、あたしは別にそういうんじゃ……」
謙遜しつつも態度では嬉しそうな由比ヶ浜。これなら決まるのは時間の問題かもしれない。しかし、余計な茶々を入れる奴が現れた。
「えー、結衣ちゃん、やるんだー?」
「え?」
由比ヶ浜が振り返った先をあたしも見ると、廊下側の席の後ろで固まっている四人組が目に入った。誰だったっけか。
「でもそういうのいいよね! 仲良い同士でイベントとか超盛り上がりそ~」
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