第六巻

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「まあちゃん先生」 保健室の扉を開いて探したけれど、まあちゃん先生はいなかった。 部活の最中に爪を割ってしまったあたしは、どうしたものかと思いながら右手の人差し指を口にくわえた。 鉄のような血の味。 衝立の向こうに三つ並ぶベッドのうち、一つだけがカーテンに囲まれていた。 少しだけ開いた隙間から中をチラッと覗いてみると、女の子が布団に包まっていた。 ぐっすり寝ているようなので、カーテンをきちんと閉めてやった。 扉の開く音がして振り向くと、白衣を着たまあちゃん先生が入ってきたところだった。 「あら、村木さん。どうしたの」 「部活で爪割っちゃった」 「あら、見せて」 口から指を外して見せた。 「うん。剥がれてはいないね。消毒して絆創膏はっておけば大丈夫でしょ」 まあちゃん先生が消毒の準備を始めたので、あたしは椅子に座った。
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