高嶺の花は見た-1

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上海に来て半年。 色々問題はあるけれどそれなりに快適なのは奈々美がいるからだと思う。 「ねぇねぇ、お野菜を洗う洗剤ってやっぱり買うべき? それとも高くても日本の輸入品を買うべきかな?」 「……いや。任せるけど」 「あーん! どうしよう!!」 やっぱり問題はあるらしい。 「しかしなんで今更? 今までだって普通に」 「ずっと流水にさらしてたの! 2時間くらい」 「……2時間?」 2分の間違いじゃなくて? そう思って聞き返したのに奈々美は大きく頷く。 「でもそれじゃダメだって昨日桧垣さんが……」 因みにこの桧垣さんって言うのは同僚の奥さんのことだろう。 海外に赴任するとどうしても民族意識みたいなものが強くなって固まってしまう。 情報もそこからしか入らなかったり。 「あぁん! 生野菜のサラダが安心して食べれる日本って幸せすぎる!!」 全く持ってその通りで、俺は苦笑することしか出来なかった。 けれどご近所付き合いはうまくやってるらしい。 これは受付で培った実績と言うかなんと言うか。 狭いコミュニティーの中では空気を読むという能力は必要不可欠。 「それでクリスマスなんだけどね」 「クリスマス?」 そうか、もうそんな時期か。 「うん、ここの人たちがパーティしようかって。ホテルのレストランを貸しきって。でも日本にも帰りたいし拓海はどうしたいかなって。ほら、チケット取るのも大変になってくるからっ」 なんて急き立てるような台詞には苦笑してしまう。 奈々美の『帰りたい』オーラがダダ漏れだ。
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