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動き自体はとても素早く、巨大トカゲはその動きに合わせることなどできない。
蘭丸の大剣は、見事に巨大トカゲを捉えた。
スパッと、それはもう綺麗に。
漫画でも見ているかのごとく、巨大トカゲは大剣により真っ二つになる。
そして次の瞬間、鮮血がそこら一帯に勢いよく飛び散った。
何リットルあるのか分からないが、血の海のごとく地面が真っ赤に染まる。
巨大トカゲは耳を劈くような断末魔を上げ、地面に伏した。
巨体が倒れたため、地震のような揺れが起こる。
俺たちはバランスを崩し、その場に伏せた。
シャワーのように吹き出る血の中で、トカゲを倒した張本人である蘭丸の姿が見えた。
「よかった…無事だったんだ」
「みてぇだな…」
ホッと安堵の息をつくと、隣で史郎さんも頷く。
蘭丸はこちらにゆっくり歩を進めている。
どうやら大剣をじっと見つめているようだ。
揺れが収まったのを確認しながら、俺たちは蘭丸の元へと駆け寄った。
「ったく、無茶しやがって…!」
「それでも、すごかった。よく倒せたな…」
咎めるような史郎さんに続き、俺は称賛の言葉を浴びせる。
蘭丸は俯いて大剣を見つめていたが、不意に顔を上げた。
「………っ!!」
「お前……」
驚いて息を呑む俺に、困惑したように呟く史郎さん。
それもそのはず。
蘭丸は、ぞっとするような笑みを浮かべていたから。
口元はにんまりと笑っているが、目はまるで捕食者のそれだ。
血まみれになっている姿がまたその狂気じみた表情を助長する。
「なぁ……今の、見たか?」
楽しそうに声を弾ませ、蘭丸は俺たちを見る。
「この剣……すっげぇ切れ味が良いんだぜ?あのでけぇのを真っ二つだ。…肉の裂けるあの感触………今でも正確に覚えてる」
独り言のようにブツブツと話す蘭丸に、俺と史郎さんは顔を見合わせた。
「これがよォ……殺すってことなのか?……やべぇ、…たまんねぇ……」
これ以上の幸せは無いとでも言うように、蘭丸は口角を上げた。
な…なんだ、こいつ。
殺したことに快感を覚えてるってのか…?
急に、この目の前にいる真っ赤な男が怖くなった。
もともとヤンキーで高圧的だったから怖いことには変わりはなかったが、これはまた別の恐怖。
俺とは別の人間として、線引きをしたくなってしまう恐怖。
この狂人と共に行動することに、恐怖を感じた。
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