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「何だお前ら、普通に倒せたな」
バサバサッと羽の音を立てながら、ゼノが空から降りてきた。
隣には女騎士もいる。
「あの…さっきまで何してたんですか…」
てっきり俺たちを置いて逃げたのだとばかり思っていたけど。
「観察してたんだ」
「観察…?」
「ああ。俺たちは基本的に、今回の儀式に参加はできない。この儀式は、騎士になるための試練だからだ。俺たちが必要以上に加勢すると、刻印は受けられなくなる」
そうだったのか…。じゃあ、この2人が着いて来る意味ってあるんだろうか。
「万が一、死人が出そうな状況になれば私たちが加勢する。そのために私たちは同行している」
俺の思考を読み取ったかのように女騎士は言った。
「まあ、心配なかったみたいだけどな。お前やるじゃん」
ゼノは蘭丸を見て二カッと笑った。
蘭丸はそれに答えることなく頭を振った。
巨大トカゲの血がポタポタと地面に落ちる。
「あ……えっと、近くに湖か何かないですか?彼、このまま血まみれってのも…」
俺が提案すると、ゼノはそうだなと頷いた。
「確か…さっき飛んだときに気付いたけど、少し歩いたところにあったはずだ。とりあえずそこに行くか」
加勢はできないようだが、こういう道案内のようなことはしても良いらしい。あくまでもサポート役のようだ。
ゼノに案内され、俺たちは湖へと辿り着いた。
蘭丸は服を脱ぐとそれを水に浸けて洗い始める。
そして自身も湖に飛び込んだ。
うわー…寒そう。
気温はほどよく過ごしやすいが、水を触るとひんやり冷たい。
俺は蘭丸の方へと歩いて行き、湖から上がったその男にタオルを差し出した。
「……んだよ?」
「え?タオルだけど…」
「見りゃ分かる。んなこと聞いてんじゃねぇよカス」
相変わらずの口の悪さだ。
その対応に心が折れそうになっていると、蘭丸はタオルをひったくった。
ガシガシと頭を拭いてる蘭丸は、再び俺に声をかけた。
「何で、タオルなんて渡したんだよ」
「…何でって……寒いだろ?」
「…………」
求めていたような答えと違うのか、蘭丸は俺を睨みつけてチッと舌打ちした。
う…っ、な、何か俺悪いこと言ったのかな…。
さっきは確かにこの男の狂気に怖くなったが、それでもあの巨大トカゲを倒してくれたんだ。
そのお礼を含めたこの行動なんだけどな。
…あ、それを言えば良かったのか?
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