審判の山

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逢坂さんはニコニコ笑って「それじゃあ私はこれで」と一礼すると俺から離れて行った。 「……チヅル、もしかして俺邪魔した?」 ゼノは俺と逢坂さんを交互に見るとニヤッと笑う。 「そんなんじゃありませんって」 「あ、敬語やめろって言ったろ」 ムッと不機嫌そうな表情で言ってくる。 何故この人は頑なに俺と仲良くしたがるんだろうか… 「いやでも、この国の王子様ですし…」 「俺、そういう仰々しいの嫌なんだよ。みんな俺が王子だからってぺこぺこしてさ…。だからチヅルが俺のこと知らないって分かったとき、ちょっと嬉しかったんだ」 「嬉しかった…」 「そうそう。年だって割と近そうだし、友達になれそうだなって…俺は本能で思ったね!」 ゼノは自信満々に胸を反らす。 本能って……。 「だからチヅル、俺の友達になってよ」 「え」 「俺の従者はたくさんいても、俺に友達はいない…。俺、友達が欲しいんだ」 ゼノは目をキラキラさせて、な?な?いいだろ?とせがんでくる。 押しに弱いタイプの人間である俺は、う…と言葉を詰まらせた。 「俺…なんかがいいの?」 「俺はチヅルがいい!」 「………」 ほらほら、と手を差し出してくる。これって握手しようってこと? 「…よろしく」 結局、ゼノの強引さに負けて俺は手を取った。 こんな大物にタメ口きいてたら、またさっきの女騎士に色々言われそうだなぁ…殺されるかもしれない…… 想像すると背中に悪寒が走った。 そんな俺の不安とは裏腹に、ゼノは大層嬉しそうに笑った。 「やった!チヅル、よろしくな」 「うん…」 でもまあ、こんなに嬉しそうだし…いっか 「チヅルはさ、一般市民っぽいよな」 ゼノは俺の隣を歩きながらポツリと言った。 「どういう意味だよ…」 それは俺の顔が庶民顔だということだろうか。それともオーラが凡人ってことか? 「いや、ただ…。何だっけ、シローだっけ?あの男なんかはとてもじゃないけど一般人とは思えねぇからさ…。チヅルたちの団体って、もともと何やってたんだろって気になったんだ」 シロー…史郎さんのことか。 確かに俺も、あの人は普通じゃないと思っていた。 銃の使い方も慣れていたし、今日だって何のためらいもなく道具をあれこれ吟味して素早く装備してたし…
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