第1話

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~入院初日~ 「倉田く~ん!!よーし、髪の毛剃るぞぉ」 教官の声に椅子から立ち上がり廊下へとゆっくり足を進める。 教官が部屋から出てきた俺にまずは身長を計るように促した。 身長を計るのは中学以来だ。 アゴを引き 背筋を伸ばし …… 「え~っと、174センチな。」 よし、中学の頃より1センチ伸びた。 次は体重。 昔から痩せているのがコンプレックスだったから少し恥ずかしいが。 体重は52キロ。 やっぱり体格はよくなってないな。 よし、剃るぞと言うと教官はイスを俺の前に出し、座るようにアゴで指示をする。 パイプイスに座り、足の間にゴミ箱を抱え込んで後頭部から一気にバリカンを入れる。 ツイストパーマのあたったチリチリの髪がゴミ箱に落ちていく。 「私は吉田です。よろしく。 少年院に入って一番始めの歓迎の儀式みたいなもんや!頭丸めて一から先生とやり直そう!」 教官は笑顔でそう言った。 申し遅れました。 そうです。 ここは少年院です。 そう言われ初めて教官の顔を見上げた。 50代半ばだろうか おっさんだ 先ほどの笑顔で出来たシワがまだ顔に残っている。 たぶんこの人はいつも笑ってるんだろう。 シワはいつまでも消えない。 その顔を見るとやけに落ち着いた。 ふと我に返り、頭の真ん中だけ髪がなく、落ち武者のような髪型であることに気付く。 ゴミ箱の上に頭を戻し、丸刈りになるのを待った。 人生初の丸刈り。 幼い頃は野球に熱中していたが、その頃から高校生になって野球はしないと決めていた。 それは、ケガで頭に円形のハゲがあるから坊主だけはしたくなかったからだ。 これを他人に晒すぐらいなら大好きな野球だってやめた方がましだと思っていた。 そんな俺が丸坊主になる。 散髪が終わり、風呂に入ると目の前の鏡に見たことのない人がうつっている。 もちろん俺だというのは言うまでもないが雰囲気が違い過ぎてびっくりしてしまった。 鏡にうつる自分は頭に円形のハゲがあるせいでまるでガキ大将。 あ~ これから1年どうなるんだろう。 そんなことを考えながら ふと、風呂場の外を見ると風呂場のガラスは完全に透明でその先ではさっきの教官がこっちを向いて笑っている。
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