第1話

5/7
前へ
/7ページ
次へ
そんなこんなで1ヶ月半が経ち俺は2級下から2級上へ進級することができた。 少年院は1級、2級と階級があり、さらにその中に上と下に分かれる4階級制だ。 俺のいる少年院は西日本ではかなり大規模な施設で、少年の中でも比較的若年層が集められている。 ある程度期間も定められているが毎月つけられる成績によって進級が決まることになっているようだ。 何とか1ヶ月半で進級できたわけで、今から新入時寮から中間期寮へのお引越し。 転寮のために荷物をまとめて、1度 室内を見渡す。 右奥には木で作った簡単なベッド その左隣りには小学校などで使っているのと同じ机、イスがある。 毎日漢字の勉強したなぁw 部屋に入ってすぐ右には洗面台。 洗面台とベッドの間には何と便器がある。 このトイレがまさかの剥き出し。 笑っちゃうぐらいに剥き出し。 和式じゃなく洋式なのがせめてもの救いだ。 そして窓には鉄格子。 扉はもちろんこちら側にドアノブがない。 何よりも1人きりで生活しないといけないのが1番の苦痛だった。 そんな生活ともおさらば。 中間期寮は団体生活だ。 「倉田!そろそろいくぞぉ!」 聞き慣れたおっさんの声。 吉田先生だ。 「1ヶ月半よく頑張ったな。向こうに行っても頑張れよ。」 そう言った吉田先生はやはり笑っていた。 俺は正直言って大人は嫌いだ。 いくら笑顔でも、いくら優しい言葉をかけてくれても、どうせ最後は自己防衛のために裏切られる。 このおっさんだってどうせそうなんだ。 ふと、母親の顔を思いだした。 中学1年の時、俺が原付の窃盗及び無免許運転で警察にお世話になったとき、何とかその日のうちに帰ってこれたものの後日家庭裁判所で審判を受けることに。 審判が始まる直前、母から「絶対に全て正直なことをいいなさい。それがあなたの為だから。」 と言われた。 審判は始まり俺は全て正直に話した。 審判も中盤に差し掛かり母への質問。 「お子さんがバイクの無免許運転をしていたことはご存知でしたか?」 俺はバイクを自分の家の前に停めていた。 母は絶対に知っているはずだ。 「いいえ、はっきりとは知りませんでした。」 母の口から信じられない言葉が発せられた。 少し気まずそうに1点を見つめたままの母を見たときに俺は大人を信じるのをやめた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加