第1話

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「本日、新入時寮から第4学寮に編入させて頂くことになりました!倉田と申します!!!よろしくお願いします!!」 思いっきり大声で言ってやった。 案の定教官は少しビックリしたのか、きょとんとしている。 「それだけか?」 「えっ…」 予想外な事態に言葉が詰まる。 あの、歪んだ口がピクリと動いた。 「もうちょっと、この中間期ではこういうことを頑張ります!とかそんなんはないんかって聞いてんねん。」 そんなこと言われたって… 「あ、いや、中間期では…かっ家族との…関係…を 予想外なことが起きた驚きと教官に対する苛立ちで言葉が出ない。 餌を求める鯉のように口がパクパクと動く。 溺れそうだ。 周りには沢山の先輩寮生がいる。 その先輩たちも俺には全く無関心だ。 こいつらも同類か…。 全員殴ってやりたい。 今すぐに。 「ぉぃ……ぉぃ?……おい!!」 遠退いていく意識を無理矢理引きずり戻された。 「何をボーっとしてんねん!お前ホンマに更正しよって気はあるんか?いつまで経ってもクズのままやぞ? まっ仕方ないか!何も考えずに1ヶ月半も過ごしたんやからもう手遅れやわな!」 よし、殴ろう! こいつを思いっきりぶん殴ってやろう! そう決心した。 その瞬間、自分が泣いていることに気が付いた。 クズと言われ 手遅れと言われ 訳のわからないまま怒鳴られ続け 本気で殴ってやる気だった。 だが、殴ってしまうと… 進級も遅れてしまう。 法律に守られた絶対的権力に抑え込まれた。 こんなところじゃなかったら… こんなやつどうにだって出来るのに。 殴りたい。 キレたい。 殴っちゃいけない。 1年我慢するしかない。 一瞬にして頭の中は葛藤に埋め尽くされ、飲み込まれていく。 その大きな渦から抜け出す術を俺は知らなかった。 飲み込まれ、溺れて、苦しくて苦しくて、涙が流れた。 「よし。もうええわ。」 そう言って教官は初めて笑顔を見せた。
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