序章

2/3
前へ
/61ページ
次へ
「・・・はぁ、・・はぁ・・・・・やった・・・か?」 天地も揺らぐ衝撃音とともに目の前の怪物は、ゆっくりと倒れていった。 「裏ボス戦とか・・・って・・・・ない・・よね・・?」 隣の少女が、肩で息をしながら、心配そうな視線を向けてくる。 「わかん・・・ない・・い・・一応、戦闘態勢崩さないようにして・・・」 「うん」 頷くと、再び武器を構えなおす。 だがしかし、目の前の怪物はあっさりとポリゴン片へと変化して、空中へと儚くっ散って行った。 「・・・・・・」 視界に【コングラチュレーション】のロゴが、盛大なBGMと共に現れる。 少年少女は、ゆっくりと膝を落とし、互いに視線を合わせると、満面の笑顔と共に、背中から地面へと倒れ込んだ。 「・・・・はぁ、遂に、やったね」 「あぁ、終わったよ・・・・・」 「本当に・・・良かった・・・」 突然、涙声が混ざったものなので、少年はどうしたのかと、身を起こす。 「・・・・・・・泣いてんの?」 彼女はそう言われると、ゴシゴシと腕で涙を拭ってから、こちらも身を起こした。 「だって、・・・うれしいんだもん・・・・・うっ◯◯◯君のバカッ!!」 「ぅわっ!・・・・な、◯◯◯?」 彼女は、少年の胸の中で泣いた。 「・・ぃっく・・・・」 「・・・・・・」 少年は暫く呆然としたが、彼女を抱きしめる腕にそっと、静かに力を込める。 「本当にもう。全部、終わったんだ・・・」 一言一句を噛み締めるように言うと、自然と涙が溢れてきた。 「・・・・ぇ、◯◯◯君?」 くぐもった声がしたかと思うと、◯◯◯が見開いた目で、こちらを見上げる。 「ん?どうした?」 返ってきた声が、震えていた。 「か・・・体・・・」 「え・・・・?」 見ると、俺の体は足元から順に、半透明となって消えかけていた。 「な・・・何だこれ・・・?」 状況が掴めないでいるその時、頭上から機械的な女性の声が聞こえる。 「◯◯◯◯◯◯様ゲームクリアおめでとうございます。今からログアウトが始まりますので、もうしばらくお待ち下さい」 「ログアウト?・・・ってことは、出れるのか!?やった!やったぞ◯◯◯!俺達ここから出られるんだ!」 歓喜のあまり、立ち上がってガッツポーズをするが、◯◯◯は、打ちひしがれたかのように、微動だにしない。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加