第3話「無重力ヒエロ」

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その途端、 〈ビタン!〉 と船内に聞こえるような勢いで、 女性が円形の窓にぶつかってきました。 私は驚き 「あっ、あっ」 と声にならない喘ぎを漏らし、 硬直していました。 突然白い服の女性は変貌しました。 その美しい相貌は崩れ、 死人のような顔に、 緑色の髪に緑色の眼をした、 醜悪な老婆に変貌したのです! 緑色の醜悪な老婆は、 枯れ枝のような腕を振り上げ、 ISSの窓を激しく叩き、 何かを喚き散らす様は悪夢のようでした。 ISSの窓が割れるのではないか、 と思わず身構えた瞬間、 緑色の醜悪な老婆は忽然と消えました。 悪夢の余韻で呆然としている私の耳に、 船外作業員の無線が届きました。 船外作業員は「どうした!?」と訝しんでいました。 今の悪夢が見えていた様子がないので、 「大丈夫、何でもない」 と答え、まだ震える手を押さえ作業に戻りました。
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