第3話「無重力ヒエロ」

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あれは幻覚だ、 と自分を納得させようとしましたが、 到底無理でした。 それが一回だけの体験ならば、 自分も幻覚だと記憶を封印出来たのでしょうが、 それで終わりではありませんでした。 幻が見えないようにコントロールしても、 亀裂が入り決壊したダムの如く、 もう戻れない状態でした。 観測用モジュールで作業した3日間、 ソレは現れ続けました。 漆黒の闇を、 白い服の乙女が舞い踊り近づいて、 窓に激しくぶつかり、 緑色の醜悪な老婆に変貌して船内の私を罵る。 気が狂うような悪夢の日々でした。 自分が身につけた科学的常識が通用しない、 その根底から崩すような体験・・・ この体験に何か意味があるのなら、 どうか教えて下さい! そして、 この忌まわしい記憶を封印させて下さい、 お願い致します。
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