海辺のバス停

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「もういいぞ。島崎。」 「えっ。はいっ。」 慌てて時計を見るともう7時。 机の上に広げた教科書を集めた。 「明日も頼むよ。」 「はいっ。」 顔をあげた先には数学の一条先生。 普段と違う笑顔の似合う彼がいた。 教室で見る先生は よけいなものを嫌うように いつも黒板に向いていた。 視線を近くに感じるなんて そばにいるせいだよね。 筆箱をしまいこみカバンを閉じた。 「一緒に帰ろう。」 「えっ。」 その言葉に向かい顔をあげると 坂口が廊下からを出している。 「なんだ。友達が待っているのか。」 先生が明らかにトーンの 低い声で話ながら廊下の方へ歩いていく。 離れて行くことが少し寂しくて 肩の力が抜けて行く瞬間を感じた。 廊下にいる二人の影をみていると 図書室にひとり置き去りに された気持ちが込み上げてきた。 二人が並ぶ廊下に向かって歩いていく。 別に誰とも約束なんてしていない。 「失礼します。」 ペコりと頭を下げて そのまま二人の前を通り過ぎた。 ぺたぺたと足音を響かせ 足早に廊下を歩いていく今日は この廊下が長く感じた。 下駄箱にたどり着いた頃 その勢いも消えていた。 なんだか、落ち着かない気配を 感じることになるのは 次の日のこと。image=481949326.jpg
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