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朝のバス停で今日始まる1日を待つ。
目覚めてから慌ただしく家を飛び出して
立ち止まるバスを待つ時間が
いつもの朝のスタート地点。
プシューッと目の前に止まる
バスの後部座席に記憶に残る横顔が見えた。
―あれっ、先生。
バスに乗り込むと空席だらけの座席を背伸びして見渡すと後ろの席で
窓から射し込む朝日を受けて
先生は眩しそうに海を眺めていた。
プシャーっとバスの扉が締まる。
慌てて座席に隠れるとゆっくりとバスが動き出す。疎らに人はいるけれど、先生の気配が近くに感じて動けなかった。
学校までの道のりに幾度も泊まるバス停で人は増えていくけれど見知らぬひと達の会話のない静けさにそれすら見えなくて、バスの揺れだけを感じていた。
気がつけば学校の前でいつものように
友達が私に手を振り呼びかける。
慌ててバスから飛び降りた。
「おはよう。」
校門のそばで挨拶を繰り返す生徒たちの
中へ先生は消えていた。
「早苗。どうしたの。」
「おはよ史ちゃん。何にもないよ。」
「そお、急ごう。」
二人で肩を並べるように教室にむかっていく。
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