The Beast.

2/8
前へ
/22ページ
次へ
 窓の外を眺めると、幸せそうに微笑む男女。  手を繋いで微笑み、いかにも楽しそうな男女。  照れながら、初めてのデートを楽しむ男女。  ずっと一緒に、談笑する男女。  子供と一緒に、喜びに満ち溢れる男女。  それが、苦しかった。憎らしかった。  見ていると、心がなんとも言えぬ虚無感に苛まれるのだ。  どうして。  笑っていられるのなんて、本人が思っているよりも、ずっと、ずっと、ずっと短い。  そう、あまりにも短すぎて、無いようなものだ。  窓から目を離した。  誰も居ない部屋、ただただ広い部屋。  僕はこの城の、一体何処にいるんだろう。  僕は、僕の心に入れない。  ドアを作れない。  それは幼い僕のプライド。  そう、誰も入ることを許さない。  自分自身さえも。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加