0人が本棚に入れています
本棚に追加
今一度自分の置かれた状況を理解しようと記憶を掘り返した。
思い出すことができるのは自分の名前や年齢、家族構成などといった自身の情報及び意味記憶だけで、自分がどのような生活を送ってきたのかは思い出すことができなかった。
しかし自分が昨日死んだのだということだけは認識できているおかしな状況であった。
何故だと考えようと頭を巡らせたがすぐに意味のないことだと気がついた。
そう、死んだ俺にとって現世は過去でありもう戻ることができない世界のだから。
そう思うと現世の記憶より今置かれている状況に興味が移った。
俺たちの世界では死んだら三途の川を通り天国か地獄へ行くと伝えられているが三途の川らしきものは見当たらなかった。
辺りを探索しようと歩き始めたが一向に世界は変わることはなかった。
もう何時間歩いたのだろうか、いやそれほど時間は立っていないのかもしれない、そもそもこの世界に時間の概念はあるのだろうか、そんなことを考えながら俺は一向に変わることのない世界に飽きたのか腰を下ろして仰向けになった。上を見てもただ真っ白だった。
ただ一点を除いては。
その一点も確かに白だったのだが明らかに周りの色とは違った白色だった。
(…何だ、あれは?)
気づいたときにはすでに遅く、それは俺の上に降ってきたのだった。
キャーという叫び声とともに――避けることもできたのだろうけれど、俺は、咄嗟に、それを、受け止めた。
それは真っ白なワンピースを着た少女だった。
そう。
これが俺と彼女との初めての邂逅であった。
最初のコメントを投稿しよう!