遥子の渇き

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出会い系サイトにのめり込んだり、バーやスナックに出かけて声をかけられたり。 そんな行動を繰り返すうちに、羞恥心や道徳観念といったまともな感覚は失ってゆく。 そして私はどの男とも長続きせず、欲望と大胆さと孤独感ばかりが増していった。 夫の勤務地が再び東京に決まった時は本当に嬉しかった。 五年近く暮らした大阪は、私にとって辛いだけの土地。 甘い新婚生活は一年にも満たず、その後は夫からまったく相手にされない日々。 東京の家族や友人とも離れ、一夜限りの情事だけに溺れた場所でしかなかった。 仕事を見つけるべきだったのかもしれない。 だが言葉も雰囲気も馴染めない土地に躊躇し、私は専業主婦から抜け出せなかったのだ。 東京に戻れば家族や友人とも会える。 それだけでも嬉しかったが、何よりも期待したのは…… もし夫が浮気しているなら、この転勤を機に女と切れる、そうしたらまた私に優しくなるかもしれない。 その可能性だった。
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