留美の欲望

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徐々に徐々に孝一の心が私に傾いているのを実感できる。 彼の心を完全に奪うまで、あと少し。 私は彼と同じ会社で一生懸命働いていた。 なるべくミスをせず、誰に対しても気配りを忘れず感じ良く対応し、周囲からの信頼を得ていった。 『あの人はよく働いてくれる。美人で性格もいいし』 社内でそんな評判になることを望んでいた。 私の評価が高ければ、紹介者の孝一だって嬉しい筈だ。 着々と私の思惑通りに進み、孝一は私に全幅の信頼を寄せ始めていた。 「留美さんを会社に紹介して本当に良かった。正直、ここまで頑張ってくれるなんて期待以上だよ」 年末に二人でディナーを食べた時、孝一はそんな言葉も言ってくれた。 そしてディナーの翌日、私はお礼のメールと共に次の誘いをかけてみた。 ――昨夜は一緒に食事をしてくれてありがとう。 今は仕事が心の支えなので、孝一さんと沙織には心から感謝してます。 お正月休みに二人でうちに来ませんか? 三人でゆっくり話したいです。
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