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二人で初詣と芝居に行くと決まった時、私は沙織に謝った。
「ごめんね。沙織も行けると思ってたから……。なるべく早く帰るからね。芝居が終わったらすぐ帰るから!」
“ごめんね”なんて心の底では思っていない。
“早く帰る”つもりもない。
なるべく長い時間を孝一と過ごし、彼の心をしっかり掴みたいと考えていた。
彼よりも企画書を優先させる沙織が悪いのだから……。
初詣の日、私は大勝負に出た。
二人だけでゆっくり会えるチャンスなんて、次はいつか分からない。
すでに孝一の信頼を得ている自信はあったから、そろそろ勝負に出ても良いと判断したのだ。
初詣の神社付近では自分から手を繋いだ。
賑わう人出で混雑の中、はぐれないように手を繋いでも不自然ではなかった。
孝一もちゃんと受け止めてくれて。
お参りが終わって駅までの道も、私たちはずっと手を繋いだまま。
人込みが少ない場所まで来ても、繋いだ手と手を離さなかった。
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