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初めて手を繋いで歩いたせいか、私は芝居を見ている最中も集中できなかった。
隣りに座っている孝一が気になってたまらない。
孝一はどう思っているのだろう?
人込みの中だから手を繋いだだけで、特に何も感じていないのか?
芝居のあと食事に誘ったら、どう反応するのだろう?
待っている沙織のところへ早く帰るため、私の誘いは断るだろうか?
私の心は芝居どころじゃなかった。
すぐ隣りにいる彼の存在を意識しながら、この後の展開ばかりを考えていた。
さっきの勇気を私は思い出す。
神社付近で自分から手を繋いだ勇気を。
そう、チャンスは最大限に活かさなければいけない。
恋が進展するかどうかはタイミングも鍵だから……。
「見応えがあって本当に面白かったよ」
芝居が終わった後、孝一は感動したように言った。
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