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「あの、」
食事に誘うつもりで私が声を発した時、なんと彼の方から次の言葉が出たのだ。
「これから食事に行きませんか? お酒でも飲みながらゆっくり話したいし、芝居のお礼にご馳走させてください」
私は喜びで小躍りしたい気持ちだった。
彼はやっぱり私に惹かれている。
沙織の元へすぐに帰ることより、私との時間を選んだのだから……。
今夜ならば勝負に出ても大丈夫だと確信した。
お酒の勢いも借りて、彼を私の部屋へ誘おう――。
私はこの時、そう決心していた。
「ごめんなさいね。沙織が待ってるのに長時間引き止めちゃって」
日本酒の美味しい小料理屋で食事をしながら私は言った。
すると彼は即座に反応する。
「とんでもない! 食事に誘ったのは僕なんだから。引き止めてるのは、こっちだよ」
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