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「お願い、沙織には絶対言わないから……」
孝一は黙ったまま何も言わない。
きっと彼は迷っているのだ。
私の誘いを受けるかどうかを……。
きっぱり拒絶しないのは、私に惹かれている証拠。
そうでなければ孝一のような真面目な男は、私の誘惑を断る筈だ。
私は抱きついたまま、彼の首筋にキスをした。
「困らせてごめんなさい。でも好きな気持ち、伝えずにいられなくて……」
私の目からは涙が流れていた。
その涙が演技なのか自然な感情なのか、自分でもよく分からない。
孝一の腕が私の背中に回った。
その感触を受け止めた瞬間、私の唇は彼の唇で塞がれていた。
それまでの孝一からは想像できなかった熱いキス。
その日、私たちは結ばれた。
彼は泊まらず真夜中に帰っていったけれど、私は沙織から彼を奪ったと思っていた。
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