遥子の渇き

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何が悪かったのか? 特に思い当たる理由はない。 子供ができたとか私の容姿がひどく衰えたとか、理由がはっきりしているなら、まだ理解できる。 分からないからこそ、余計に救われないのだ。 夫の帰宅はいつも遅い。 夫自身は「残業だ」と言ってるが、実際のところは分からない。 私への無関心から推測して、女がいることも充分に考えられる。 疑う気持ちはあったものの、夫を問い詰めたことは一度もなかった。 問い詰める気にもなれなかった。 何故なら、私は夫と別れたくはないから。 もし問い詰めて開き直られたら……? 離婚を言い渡されたら……? そんな悲しい事態を想像すると何もできなかった。 不況の今でも世間と比べて夫の収入は良く、将来的にも安定していると思う。 そういった打算を差し引いても、私はまだ夫を愛していた。
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