沙織の葛藤

2/18
258人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
2月10日、バレンタインデーの4日前に私は遥子と会っていた。 一週間前に「会いたい」と遥子から電話をもらい、約半年ぶりの再会。 遥子は私の会社近くで仕事が終わるのを待っててくれて、一緒にホテルのラウンジへ行った。 ティータイムが終わりバータイムに変わったばかりの時刻で客は疎ら。 「ここなら何でも話せると思って」 遥子はそう言って悲しげに微笑む。 確かにこのラウンジは話しやすい雰囲気だ。 一つ一つの席が隣りと離れているので他客を気にしなくていい。 よほど大きな声でも出さない限り、私たちの会話は周りに聞こえないだろう。 お酒を飲みながら秘密の話などするには最適な場所だった。 私はカンパリソーダ、遥子はバーボンの水割りを頼んで乾杯する。 「突然の誘いで驚いたでしょ?」 「うん。話したいって言われたから、遥子に何があったのかずっと気になってた」 「……」
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!