沙織の葛藤

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「何もない関係、って……?」 おおよその見当はつくものの、確認せずにはいられない。 きっと遥子のご主人は彼女に無関心なのだろう。 二人の時間も会話も、スキンシップさえ無いのかもしれない。 「形だけは夫婦してても中身は空っぽ。私に対する愛なんかない。情もない。きっと」 投げやりな口調で遥子は言った。 「遥子の方はどうなの? 遥子の気持ちは?」 聞きながら、ふと疑問を感じた。 なぜ遥子は私なんかに、こんな重大な身の上話をする気になったんだろう? 半年前に奈緒美の結婚披露宴で会ったけれど、それまでは疎遠になりかけていた。 その披露宴で再会してからも、留美とのように距離が縮まったわけでもない。 独身の私と専業主婦の遥子とでは話が合わないと思い、自分から距離を縮める気も起こらなかった。 忙しい私にとって、新たな人間関係を深めるのが面倒だった……というのもある。
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