沙織の葛藤

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人妻の遥子に恋を勧めるなど、普段の自分じゃ考えられない。 不倫なんて嫌いで自分の価値観とは反するものだ。 だけど――。 どうしようもない孤独を抱えている時、通常の常識的な価値観が飛んでしまう場合もある。 「ねぇ? 遥子はどうして私に相談してくれたの? こう言ってはなんだけど、私たちそれほど親しくはなかったから、遥子が私に相談してくれたのが不思議で」 「沙織しか思い浮かばなかったの」 「……」 「そりゃあ会う回数とか、表面上は沙織より親しくしてる友達もいるわ。だけどね、こういう話となると別よ」 「……」 「沙織なら私の立場で真剣に考えてくれると思ったの。私の気持ちも分かってくれるような気がしたのよ。直感だけど……」 遥子の言葉は素直に嬉しかった。 直感でも何でも、いや本当は他に友達なんていないのかもしれないけれど、私をそこまで思ってくれたことは嬉しかったのだ。 遥子にはどんな手段を使っても、孤独から逞しく立ち直って欲しいと思った。
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