留美の焦り

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きれいにすべて食べ終えた孝一は笑顔で言った。 「このお礼は今度必ずするよ。だから今日はこれで……」 「え? まさかもう帰っちゃうの?」 「ごめん……」 予想外の展開に私は大きく動揺する。 まさか部屋まで来て食事だけで帰ろうとするなんて……! 泊まらずに帰ろうとすることは想定内。 だけど、私を抱かずに帰るなんて思いもしなかった。 こんな屈辱は初めて……。 部屋に立ち寄って手料理だけ食べて帰られるなんて、女として終わってる。 「留美、ごめんね」 「イヤ……!」 私は無意識のうちに孝一に抱きついていた。 孝一の困惑顔を見たくなくて、彼の胸に顔を埋める。 「もう少しだけ一緒にいて。あと5分だけでも……」
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