沙織の絶望

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翌日の夕方、私は制作会社のプロデューサーに呼び出され、喫茶店で向き合っていた。 松岡先生も紹介してくれたプロデューサーだ。 この制作会社の規模はそれほど大きくなく、六本木の古いビルのワンフロアに事務所を構え、スタッフは10人ほど。 「連ドラの企画、ダメになっちゃったよ」 プロデューサーは肩を落として言った。 「沙織ちゃん、頑張ったのにほんと残念だね」 彼本人も相当落胆している筈なのに、私を気遣ってくれる。 失意のどん底の中、その優しさに唯一救われていた。 「私の力不足ですね」 「ううん、企画書の内容は良かったよ。実際、局の担当プロデューサーも褒めてたしね。ただツイてなかった」 「……」 「ほら、ちょうど今他局でやってる“最後の初恋”ってドラマがあるじゃない?」 「はい」
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