沙織の絶望

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確かに家で私の手料理を食べながらでは話にくいのだろう。 別れ話なのだから……。 店員さんに案内された席は、奥の角で一番落ち着けそうな場所。 孝一がウーロンハイを頼み、私も同じ物に合わせた。 「沙織の食べたい物を選んで。僕は何でもいいから」 孝一がメニューを渡しながら言う。 そう言われてもじっくり選ぶ気になどなれず、メニューの始めに載っていた“今日のおすすめ”から三品ほど適当に選んだ。 ウーロンハイのグラスが運ばれてきて、私たちはそれを手にする。 こんな時じゃなければ、グラスを合わせて乾杯したはずだ。 だが孝一は「お疲れ様」と言っただけで、すぐにグラスを口にした。 私も一口飲む。 「美味しいね」などの言葉は当然なく、殺伐とした雰囲気と重い沈黙。 私からは何も言えず、ただゆっくりとウーロンハイを飲むしかなかった。 「沙織、ごめん」
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